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『始動』 4

グオオォォォオオォォォ


ザン


大型骸骨が雄叫びと共に放った一撃は空を斬りそのまま地面に打ち込まれた。
大型骸骨の攻撃は力こそあるがスピードは遅く初動さえ掴めばかわす事はさほど難しくなかった。


「はぁっ!」


攻撃を避け出来た隙をついて反撃に移る。


2体が相手でも3体が相手でも対処は苦にならなかった。
そこにグレイツ・バシパーのロングレンチ攻撃が加わり戦闘よりも訓練に近い状況で戦う事が出来ていた。










『真説RS:赤石物語』      第2章 『始動』-4







「akariさん、剣速むちゃくちゃ速いですね!」
ミコトが大型骸骨1体を斬り伏せながら話した。
「そうかな?剣に速さを乗せる事で切れ味が出るの。」
「ミコトも剣士なら剣速の事頭の中に入れておいてね。」
左右に位置した2体の大型骸骨を同時に叩き伏せながら答えた。
「ミコト、akariさんはおっさんずNo1の剣速の持ち主だから見習って損はないよ。」
支援スキルを掛けなおしながらAndrsenが話に加わった。
「はい!」
ミコトは返事とともにさらに1体の敵を斬り伏せた。


数的不利を余儀なくされたが余裕を持って戦う事が出来、MOBの殲滅も時間の問題だと思われたが不意に


カタカタカタ  ガチャ


何か聞きなれない音が耳に入った。


「あ・・・あれっ・・・・・」
グレイツが大声で声を引き攣らせながらakariが最初の大型骸骨を倒した場所付近を指さした。
そこではakariに倒され崩れ落ちたはずの大型骸骨がゆっくりと立ち上がっていた。


「何すかこれ?きりないですよ。」
後方で槍を振り回し順調にMOBを駆逐しているバアルだったがその顔に困惑の表情が窺えた。


「確かにこれじゃあらちがあかないわね。アンちゃんTUの準備お願い。」
「了解!」
akariの言葉を待っていたかのように天に祈りだしCPを貯め始めた。


「いつでもOKですよ。」
「さすがアンちゃん、早いね。合図出すから続いてね。」
そう言うとakariは微量の空気を体内に吸い込み一瞬の間をあけ雄叫びをあげた。
大気が震えだしその場にいたほとんどのMOBが立ちすくむ。
中にはそれだけで崩れ落ちるMOBまでいた。


ウォークライ。剣士スキルの一つで雄叫びと共に特別な周波数の振動を放つ事で高範囲の敵に対しスタン効果や風属性のダメージを与える事が出来る。


Andrsenは敵がウォークライで身動きがとれない事を確認し両手に力を込め上方むけ突き上げた。


フォン


Andrsenの周りに生じた光の輪が加速しながら外側に向かって拡がっていく。


ガシャン ガシャン


続けざまに繰り出される光の輪が敵をのみこんでいった。
次々と骸の山が出来上がっていく。


「すごいですアンさん!このスキル何ですか?」
初めて見るスキルにミコトは少々興奮している様子だった。
「これはターンアンデットって言ってTUって呼ばれる事多いかな。」
「アンデット系のMOBに麻痺効果を与える事が出来て運がよければ即死効果も付加出来るんよ。」
「って言っても敵に抵抗あったり高レベだったら効かないけどね。」
その言葉とは裏腹にTUの光はPTの周りにいた大型骸骨全部を飲み込みあたり一面を骸骨の山と化していた。


「ある意味最強のスキルですね!」
「そうかもね。でも・・・・・」
何かを気にしているのか少し曇った顔でAndrsenこたえた。


カチャカチャ・・・・・


さっきと同様に大型骸骨が何事もなかったかの様に立ち上がりだした。


「ちっ、やっぱりか・・」
不安が的中したAndrsenの顔がさらに曇る。


「ビショップの浄化の力が効かないとなると・・・後ろから闇の力で操られてるわね。」
「そうみたいですね。どうします?akariさん」
「一生こいつらの相手も嫌だしね・・・。」
「今度はトライアングル2で行こう。先頭は私がいくからミコトとバアルは後方へ。」
「「はい!」」


「よし。」
全員が位置についた事を確認し再度ウォークライでMOBをスタンさせた。
「いこう!」
akariがスタンしている大型骸骨を斬りわけ出来た道を残りのメンバーがあとに続いた。


トライアングル2。1と同じく三角形状に陣を組むが前方に一人、後方に二人とする事である程度隊形が崩れても素早い移動速度をとる事ができ、1とは真逆の考え方を有している。


「はぁっ!」
先頭にたつakariの超高速で繰り出される剣技と数多の先頭経験から生まれる状況判断によりスピード、隊形をほぼ崩す事なくPTはB3に入りその最深部へと着々と歩みを進めていた。


細長く一直線に伸びた通路に差し掛かった時PTを不穏な空気が包んだ。


「いったん止まろうか。」
いち早くそれを察したakariが隊を止める。
「この奥にいますね・・・・」
Andrsenも通路の奥にいる何かの気配に気付いた様子だった。
「大丈夫??」
前衛職として絶えず気を張っていたミコトとバアルの顔に疲労の色が見えはじめていた。
「大丈夫です・・・行きましょう。」
しかし2人はこのQuest最後の難関になるであろう敵をむかえさらに集中力を高めた。
「いい返事ね安心したわ。さぁ最後よ行きましょう。」


細い通路を抜けたそこには今までにない広い空間と部屋の中央付近にいた異形なMOBがPTを迎え入れた。


「ネクロマンサーが最後の大ボスって事ね。」
今まで冷静だったakariの顔が初めて歪む。


「誰ダ 貴様ラ・・・
 我ガ 崇高ナル 儀式ヲ 邪魔シニキタノカ?
 ソノ罪 ソノ身ヲモッテ 償ウガヨイ・・・・」


ハノブ高台望楼最深部の空気が少しずつ張り詰めていく・・



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